「50羽も飼っているなら、卵も食べ放題でしょう?」
よく言われますが、現在の収穫量を聞くと皆さん驚きます。
50羽いて、1日たったの5〜6個。
スーパーのパック1つ分にも満たない日もあります。
「えっ、病気? 餌が足りないの?」
いいえ、違います。
これは僕が意図的に「産ませない」選択をしているからであり、鶏たちを長く健康に生かすための戦略なのです。
この記事では、養鶏初心者が陥りやすい「産ませすぎ」のリスクと、ボロボロの見た目に隠された鶏たちのドラマについてお話しします。
秋から冬、卵が激減する理由
卵が減り始めたのは秋口からでした。
理由はシンプルで、自然環境の変化です。
- 日照時間の減少: 鶏は光を感じてホルモンが分泌され、卵を産みます。日が短くなれば自然と産卵は止まります。
- 裏庭のご馳走不足: 夏場は豊富だった虫や草が減り、動物性タンパク質の摂取量が減ります。
普通の養鶏場であれば、夜間に照明をつけて昼だと勘違いさせ、配合飼料で栄養をブーストし、冬でも毎日産ませます。
しかし、我が家はオフグリッド。自然のリズムに逆らうような照明管理はしません。
「餌を増やせば産む」を知っていてもやらない理由
実は、冬でも卵を増やす方法は簡単です。
カロリーの高い餌を、食べきれないほど大量に与えればいいのです。
僕も経験上、それをやれば産卵数が増えることは分かっています。
でも、あえてやりません。
なぜなら、「卵詰まり」で死なせてしまうリスクがあるからです。
卵は「命の余剰分」でいい
鶏にとって、毎日卵を産むというのは凄まじいエネルギーを使います。
無理に産ませ続けると、産卵管に負担がかかり、卵が体内で詰まってしまう事故(卵詰まり)が起きやすくなります。これは命に関わります。
僕が餌をあげる基準は、「卵のため」ではありません。
「鶏の生命維持のため」です。
まず自分の体を維持して、元気に冬を越してもらう。
その上で、栄養が余った時にだけ「おすそ分け」として卵を産んでもらう。
その結果が「1日5個」なのです。
少ないと思うかもしれませんが、これで鶏が長生きしてくれるなら本望です。
見た目がボロボロでも「かわいそう」ではない

今の時期、鶏たちの見た目は決して良くありません。
背中の羽が抜けて地肌が見えていたり、ツンツンした筆毛が生えていたり。
知らない人が見ると「虐待? 病気?」と心配されるかもしれませんが、これには野生ならではの理由があります。
1. 換羽(トヤ)と新しい衣替え
頂いた「廃鶏」たちは夏の間はげていましたが、今は冬に向けて新しい羽が生え揃いつつあります。
古い羽を捨てて、密度の高い冬毛に着替えるエネルギーを使っている間は、卵はお休みです。
2. オスの愛と、砂浴びの代償
羽が抜けるのは生理現象だけではありません。
- 交尾の跡: オスが交尾のたびにメスの背中に乗っかるため、背中や羽の付け根が擦れてはげてしまいます。
- 砂浴び中の無防備: 気持ちよさそうに砂浴びをしている最中は無防備です。その隙に他の鶏につつかれて、羽をむしられることもあります。
ボロボロの背中は、彼女たちがこの群れの中で社会生活を営み、オスに愛され、たくましく生きている証拠なのです。
5歳の廃鶏が現役でいられる理由
我が家には、養鶏場から引き取った「廃鶏(成鶏)」もいます。
年齢はもう5歳になるはずです。
一般的な養鶏場では、産卵率が落ちる2〜3歳で「廃鶏」として処分されてしまいます。
しかし、我が家の5歳児たちは、まだ現役で卵を産んでくれています。
もし僕が照明をつけ、濃厚飼料を与えて酷使していたら、とっくに寿命が尽きていたでしょう。
「無理をさせない」「冬は休ませる」というスローライフな飼い方をしているからこそ、彼女たちは養鶏場の常識を超えて長生きし、命を繋いでくれているのだと思います。
まとめ:卵は工場製品じゃない
冬の卵は貴重です。
1日5個の卵を手に取ると、夏場よりもずっしりと重みを感じます。
それは単なるグラム数の重みではなく、厳しい寒さの中で生命維持を優先し、その余力で産み落としてくれた「命の重み」です。
数が少ないからこそ、ありがたく頂く。
それが自給自足の醍醐味であり、鶏たちへの礼儀だと思っています。
🐓 我が家の冬の掟
- 卵のために餌をやらない。生命維持のためにやる。
- 照明で自然のリズムを狂わせない。
- はげた背中は、たくましく生きている勲章。
- 「産ませない」ことが、一番の長生きの秘訣。


コメント